さ く ら 花

since 2006.4.1

No1



 no20


毎日、毎日
高志は、佐知子の父へお願いに来ていた

どうか、お願いします

佐知子さんを僕に下さい

だめだ!

佐知子は、ひとり身ではない

高志は、目を据えて

そして、はっきりと言った

僕の子です!

たわけたことを言うな!
許さん!

僕の子です

いや、俺の子です!

佐知子の父、俊夫は 思わず

高志を殴りつけた

唇に血がにじんだ

高志は、まっすぐな目をして言った

俺の子です
いくら殴っても、俺の子です!

佐知子は
その様子を聞いていて、思わず庭に飛び出ていた。

俊夫がうめくように言った

好きにしてくれ。。
そして、後向きになり肩を震わせていた
佐知子を頼む。。

ありがとうございます

高志は、そう言うと

急いで、佐知子を追い掛けた

さっちゃん、お父さんに許してもらったよ

佐知子は、はらはらと桜の花びらを受けながら
泣いていた。

何もかも見ていた桜の花びらが優しく風を受けて
散っていた。

そして、佐知子のお腹の中で

新しい命がピクリと動いた。。。

           完


2006.8.3



No19

さっちゃん
お父さんから、反対されたよ
でも僕は、一生さっちゃんを護っていくつもりだ
その気持ちは、かわらない

小さい頃さ
ふたりでよく一緒に遊んでさ

同士、なんて言ってさ

あの頃の気持ち

懐かしいね

もうずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっと、一緒だ

いいね

高志は、そっと佐知子を抱き寄せた。。。

庭の桜が薄紅色から
ほんの少し、白に近づいていた。






 No18

高志君、ちょっと話したいのだがいいかね

佐知子の父が言った

はい

君の好意は、とても嬉しい
けれども、私としては、前途ある君に佐知子を押しつけたくない

待って下さい
押し付けるってそれは何ですか

僕は、大げさな言い方ですが

小さい頃からさっちゃんと結婚すると
ずっと思ってきました。

気持ちが離れたこともありましたが

今は、僕自身がさっちゃんを必要としています。

そう言ってもらえるだけで
嬉しく思うよ

だが、これだけは
許してあげられそうもない。。





No17






おおぃぃぃぃ
さっちゃん〜
ドアに向かって今日も高志は話した

俺さぁ
明日、シカゴへ帰るんだぁ
じゃ、なぁぁぁ

そう言うと、ドアが開く後ろへ隠れた

たかちゃん
待って!


佐知子は、思わずドアを開けた

はははははははははははっ
やっと出てきたなぁ

高志はドアの後ろから
ひょいと顔を出した

かくれんぼは、もうおしまいにしょうよ

はははははははははっ

2006.7.30




No16




さっちゃん〜

おおいぃぃ、さちっぺ

また来たぞぉ

高志は、佐知子部屋のドアに背もたれして
話していた

小さい頃は、桜の木の下でよく遊んだね

今 満開だ

あれから、何回咲いたのだろうね

高志ちゃん。。

佐知子は呟いた

ん?

今 呼んだかい

声が聞こえた気がしたよ

これ、後で読んでおいて

ドアに小さな紙をはさむと、高志は帰って行った

中には

ひとこと

小さな命
ふたりで護っていきたいね

そして、挟まれていたもの

それは、四葉のクロ−バ-だった

佐知子が、小学校の頃
見つけて、高志にあげたものだった

綺麗に押し花にされて
また佐知子に戻ってきた

佐知子は、はらはらと涙をこぼした。。

2006.7.28