Short Story

第1集(2002.6.14〜2002.7.31)
第2集、第3集(2002.8.1〜2002.9.30)
第 4集 (2002.10.2〜2002.10.31)
第5集(2002.11.1〜2002.11.30)
第6集(2002.12.1〜2002.12.16)

第7集

NO 146

蝶々のお墓

舞子はまだ小学校の低学年だった。
幼い頃には、まだ自然が残っていて
母の作る、キャベツからは
春になると、蝶々が
生まれては、花へ止まっていた。

舞子は眺めることが好きで
決して捕まえとはしなかったけれど
いつも追いかけては
よく野原で遊んだものだった。

蝶々の短い命もまだ知らない

ある日のこと
庭に死んでいる蝶を見つけると
お墓を作ってあげようと
思いつく

母にかまぼこ板をもらい

ちょうちょうの基
と書いた

あとで見に来た
母と姉は
笑って言った

舞ちゃん、お墓の字が間違っているよ〜

ええ〜
この字と違う?
なんか、似てると思って...

まだ小さい舞が
本を読むことが好きだということで
なんとなく、覚えていた字だった。

2003.3.13



NO 145

メッセ−ジ

さやかの姉は
戦後、父が大陸から引き揚げてから
生まれた子だったので
ベビ−ブ−ムの頃だった。

九州の田舎町では、中学を卒業してすぐに
集団就職する子はまだ何割かはいたのだった。

今はもうすでにないけれど
倉敷の、K紡績や、大阪のS製麻などへ
就職して行った。

文章を書くことが得意だった
姉の雅子は
ある年に応募した、働く青少年の作文コンク−ルで
市長賞をもらっていた。

その時のことが縁で
翌年の、就職していく子達へ
ぜひに、お祝いの言葉を
市民会館で、何百人もの人の前で
メッセ−ジを読むことになった。

県下全員の生徒だから
相当な人数となったのでした。

まず、原稿を下書きして
県庁の職員さんへ読んでいただいて

不思議とあがることもなく
読めたことが
ほっとしたと、姉は話していた。

その姉の子達も、今はもう
結婚適齢期になっていた。

あの姉のメッセ−ジを聞いた人たちは
遠い地で
頑張っているだろうか..

姉のメッセ−ジ
それは

人の職業は、楽そうにみえます
けれども、自分の与えられた仕事を
3年頑張ってみてください
きっと
自信と、自分の頑張りを見つけることが出来ますと。

2003.3.4


NO 144

南京豆

ねえ ヒサちゃん あそぽ〜

なんだ、舞
また、遊んでもらえなかったのか
うん..
もう兄ちゃんたち大きいし

よっしゃ!
 神社にいこうか

ほら、舞
ビ−ナッツ持ってきたよ〜

あっ ちょうだいね

あのさ

うん!

こうして半分に割ると
ほら、 こっちが男 こっちが女だよ

ん?
なんで?

あはは わかんないだろ〜

******

舞は微笑みながら思い出していた
当時7歳の舞にとって
わかるはずもなかった...

2003.2.25



NO 143

缶ビ−ル

缶ビ−ル買ってこようか?

いらないよぅ
飲むと眠くなるからぁ

いいよ、買ってくるから
コ−ラも欲しいし

団地の一番下の自動販売機までいかないとないのに
由美の夫は、風呂上りに出かけて行った。

冷えるのにね!
そんなことを思いながら
由美はテレビを見ながら待っていた。

ただいま〜
二階の冷蔵庫へいれといて

うん!
ありがと

次の日
夜になれば、飲んでと勧める
自分は飲まないのに
こうして買ってきては
飲んだら〜?
そういう由美の夫だった

夜、遅くネット徘徊しながらだから
飲めば、うとうと眠くなるいつもの由美だった..

2003.2.12



NO 143


智美は朝、服を着替えていて
何気なく、足の傷を見つめた

弁慶の泣き所に3センチほどの傷
削ぎ落とされてしまっていてない..

体育の時間に足を出すことが嫌いで
下ばかりむいていたこと
走ることは好きだったのに
とうとう、体育の授業が嫌いになったこと

あれは
小学生の2年生
音の鳴る、庭履きを買ってもらって
得意げに履いた
次の日
浅い下水に落ちて
出来た傷

泣きながら、病院でのヒトコマが
思い出されて

時計を見ると
もう皆を起こす時間

智美は急いで
ストッキングをはいていた...

2003.2.10



NO 142

おせったい

友香はス−パ−で買ってきた懐かしい駄菓子を食べながら
幼い頃、ふるさとでは
おせったいと呼ばれる日があったことを
思い出していた。

一年に一度くらい
そこの家へ行くと
お菓子を配っていて
子供だけがもらえたこと

子供同士の情報で
あそこの家だよ
教えあっていた

用意をしている家は
小さな袋に入れて
もろぶたの中に並べて
子供を待っていてくれた。

春の風が吹いていた頃
あれは
4月8日
花まつりの日だったのかもしれない..

なつかしき風が吹き
友香の口の中で、お菓子が甘く広がっていた..

2003.2.7





NO 141

桜島YH

由美はもうひとつ思い出していた

桜島のユ−スホステルに
泊まった姉は
当時では、夕食後皆でフォ−クダンスを
踊ったらしい

ペアになり
当時は、若者はみんなケチケチ旅行で
よく利用していたから
たくさんの人だったという

姉はやっぱり由美と一緒で
小柄だったので
若く見えていた

姉と一緒にペアを組んだ人は
東京からの
学生だったらしい

ちよっと
暗い感じの素敵な人だったとか

そして
最後に
ベストカップルが選ばれて
なんと
姉とその人だったらしい

次の日
玄関で、お互いに
見つめ合ったのに
名前さえも聞かず
別れた
青春の1ペ−ジ

桜島ユ−スホステルは、今もあるという..

2003.2.5



NO 140

ユ−スホステル

由美は思い出していた
年の離れた姉の話

若い時はね
ひとり旅が好きでね
ある時
横浜へ行ったのよ

港に停泊している船が
ユ−スホステルになっていてね
昔、引き揚げ船だったらしいけどね
泊まれるようになってた。

船の中を見学して
泊まる船室へ入って
鍵をかけたら、今度はいくら開けようとしても
開かなくて
最後は、ドンドンってね
たたいてね

そしたら
同じ部屋へ泊まる人がきてくれてね
(^。^;)ホッとしたのよ

おまけに
お風呂は、よじ登らないといけないような
高いところ
つまり湯船が高いところにあってね
おまけに煮え湯のよう..
あきらめたのよ
服脱いでいたのにね
(>_<)

由美は思った
まだあるのかなぁ

氷川丸っていってたけど。

2003.2.4



NO 139

廊下

小学校6年6組へ通じる廊下

幸一は、同じクラスの舞に話しかけていた

あのサ

なあに?

なんでもないんだけどさぁ

??

わたし、友達が待っているからぁ

あっ!

***********

あの時さ
なんで行ってしまったんだよぅ

えっ
なんのこと?

小学校の時さ

あの廊下で話しかけられたこと?

うん

俺さ
お前のこと
好きだったんだ

もう...
30年も前のことじゃない
(^-^)

まさか、結婚するなんてね〜

....

2003.2.2



NO 138

母の顔

慶子はそっと母の横 顔をみながら
思い出していた。

満州での終戦後はそりゃぁ
大変でね
毎晩、他国の兵士が襲ってきてね

とにかく..
女を出せと..わめいている..

あるとき
天井裏へ逃げたよ
隠れていないかと
銃で発砲した、弾が脇でそれたよ..

その時、あんたの姉さんはね
まだふたつ
その時にお昼寝してたんだよ

起きていて泣いたら
殺されていたよ

慶子は、そっと母の顔を拭いていた

もう何もかも
記憶はなくなり
子供になってしまった
母の顔を..

2003.1.17



NO 137

同窓会

ながよちゃん
同級生で結婚しているけど
いきさつは?

あのねぇ
主人は船に乗っていてね
帰ってきたら
いつもお土産を持ってきてくれたのよ

それもね
パリのものとかね
その当時は
パリのものなんて
珍しいしね
コロッって..
ふふふふっ

そうなんだぁ

いまも船?

今は地上勤務になったの
名古屋にいる

月に一度くらい帰ってくるよ

そういう、さっちゃんのいきさつは?

あのう..そのう..

2003.1.7



NO136

新しい年が明けました。
お元気でおられますでしょうか

今年は寒さが強く感じられましたが
穏やかな大晦日でございました。

そちらでは
雪だったとか
さぞ寒くかんじられたことでしょうね

貴方からのメ−ルは
いつも少なく
わずかな中から
貴方の吐息を探します。

私たちには
もうそんなに長くは時間が残されていません

だとしたら
私が
貴方さまをお慕いしていますこと
心に思うこと
ためらいもなく言えます..

春になれば
また、桜が私たちを
呼び寄せてくれます。

ですから
時間の経つことが
ちっとも苦になりません。

貴方に会う日が近づいているからです。

どうか
お元気でいてくださいね

琴乃

2003.1.1