Short Story

第1集(2002.6.14〜2002.7.31)
第2集、第3集(2002.8.1〜2002.9.30)
第 4集  (2002.10.2〜2002.10.31)
第5集 (2002.11.1〜2002.11.30)
第6集 (2002.12.1〜2002.12.16)
第7集 (2003.3.1 〜 2003.3.13)
第8集 (2003.3.18 〜 2003.7.4)
 第9集 (2003.7.20 〜 2003.9.13)

第10集 第11集



第12集

No212
メイル


ねぇ
とおるぅ
耳かしてぇ



あのね
ごにょ ごにょ

(;°°)ワーッ!

ふふふっ

ヒョ-ン°゚°。。ヘ(;^^)/ スタコラサッサ
にげろやにげろ〜

..............

こらぁ
まてぇ
そんなことしたら
口ふさいで息させないからな

おぼえてろよ

(爆)

ははははははははははっ

されたかったりして?

かなっぺはな!

ははははははは

2004.4.23



No211
メイル

とおるぅぅぅぅぅ
ただいまぁ
帰ったよん
いないけどPCに落書きしとこっと!

やあい
とるとるとるとおるぅ
この道よく、とおる??

(*^.^*)エヘッ
どんなもんだい
ペチョ はなくちょもつけてっと”””
わああああああい
ピョーン°゜°。。ヘ(;^^)/ スタコラサッサ

*********
こらぁぁぁぁぁ
かなぶんぶん
ぶんぶんとうるさいやっちゃな
まったくぅ
帰った象

おとなしく待っていたかい?

おおおおおおい
かなぶん、いるかい?
出てこおいぃ

2004.4.21



No210

メイル

おぉぉぉぉぉぉぉい
かなっぺいるかぁ
帰ってきたぞぅ
お風呂入ったかぁ
よおく洗ったかぁ

(爆)

*******
わわわわっ
おかえりぃ
うん
お風呂入ったよぅ

(*^.^*)エヘッ
髪はまだ濡れているぅ

今夜遅かったね

待っていたよぅぅぅぅぅ

かなかなっぺぇ

2004.4.20



No209

メイル

ねぇ
徹ぅぅ
またいつか逢えるよねぇ

ねぇ

いつか、いつかきっとぉぉ

うんって言ってよぅ

ほいって言ってよぅ

加奈のおねげぇだぁ
わわわわわっ
くすくす〜

**********

かなかなっぺぇ
ほい!
いつか、 いつか?
5日かい???
はははははははっ

逢えるさ
地球の裏に住んでいる訳じゃなしさ

待ってろよ

もうすぐ帰るさ

まったくぅ
いつか、いつかって言うから

5日にしておくぞ−

2004.4.19



No208

父の顔

舞ちゃん、元気?

うん
元気だよ
最初は
こっちの方言がわからなくてねぇ

そうだろぅねぇ

うん
元気だよ、でも

父さんねぇ
舞をそっちにやりたくなくてねぇ

えっ?
そうだったの?

舞は思い出していた
あの結婚式に映っていた、父の顔
なんともいえない、淋しさと諦めと
その時は気づかなかったこと..

今更に父の気持ちを思う

季節が巡るとわかってくる

さわやかな風吹く5月を思う
私を見送ってくれた、父の顔を思う

2004.4.17



No207

入学式

ほら! 舞ちゃん
髪を結ばなきゃ

うん!
お母さん早く結んでぇ

はい はい

母の手縫いのクリ−ム色のブラウス
後ろボタンで、前に茶色のリボンが付いていた

その上にモスグリ−ンのベルベットの
ワンピ−スを着た舞だった。

靴は茶色の革靴

髪はふたつに結んでもらい
大きな黄色のリボンをつけてもらっていた。

嬉しくて
母と歩いた道
学校までの道

今もある
入学式の写真は
幼い私が笑っている

次の日から
赤いランドセルが背中で笑っていた

2004.4.13



No206

メイル

徹はメイルボックスを開いて驚いた

加奈からだった

























メイルボックスには34文字となっていたから
長いメイルかと思った徹だった

まったくぅ
加奈らしいな
返事しないとな















2004.4.6



No205

別れ

波の音だけが聞こえる
春の風はまだ冷たくて、頬が冷えていく

舞ちゃん
さようなら
お父さんが転勤だから仕方ないさ

うん
そうだね

またいつかなんて思えないほど
遠いね

そうだね

小さい頃は遊んでくれてありがと

よくからかったよね
舞ちゃんをさ

そうよ
私ばっかりね

うん
気になってさ
僕は好きな子には
からかうからさ
ははははは

そうだったの??

じゃ
握手ね
元気でねぇ

舞ちゃんもね

うん

またいつかね

会えるといいね

さようなら

ふたりを包む風は冷たかったけれど
かすかに春の気配が見える

海の色が輝いていた

2004.4.4



No204

空港にて

香織の乗る飛行機の搭乗アナウンスが始まっていた

それじゃ
帰るね

うん
お母さんに宜しくね

ありがと

香織、帰ってくるよな

お母さんの様態次第だけれどね..
もうお仕事辞めて
ふるさとへ帰らないといけないのかもね

そうだね

ふたりは愛し合っている
香織のふるさとには母ひとり

ふたりの瞳は煌いている
誰もふたりを引き離すことは出来ない

青空に向かって
飛行機は飛び立って行った

ふたりの結ばれるまでの
長い道のりが始まっていた。

2004.3.31



No203

メ−ル

俺んとこ来いよ
飛行機だったらすぐじゃないか
すぐに帰れるさ

好きなんだ
どうしょうもなくさ

俺んとこへ嫁に来いよ
待ってるぞ

もう離しはしないからな
絶対だ!
いいな!

****
さとみはためらっていた。
母はひとりになる
遠い空に行くことへのためらい。
それでも心はあの人のところ。
桜の花の数だけ揺れている
春風に揺れている

来なかったら奪いに行くまでさ

続いてメ−ルが届いた..

2004.3.28



カヤの葉

No202

端午の節句がくると思い出す
母が手の切れそうなカヤの葉を採ってくる

ちまきを作る為に。

そばで私はくっつくようにして見ている

5月の風はもう優しくて

あいちゃん
もうすぐ誕生日だねぇ
大きくなったねぇ

うん!

ちまき出来たら
すぐ食べてもいいの?

いいよ

あの頃は
時はゆるりと流れ
小川にはめだかがいた
名も知らぬ、野の花は咲いて

若き母と
幼い笑顔の私がいた。

2004.3.27



お雛様

No201

人の記憶は何かの拍子に
ふいに幼き日のことを思い出すことがある

母が折り紙で作ってくれたお雛様
それを雛段のように貼ってくれて..

にこにこ顔の私がいた

学校帰りにおもちゃ屋で見た
あの緋毛氈の赤が
心に鮮やかに蘇る

子供心に
なんて綺麗なんだろうと
うっとりと眺めたこと

毎日、毎日眺めては
いつか、きっと
買ってもらうんだぁと..

そして
それ以上に心に残っているもの
それは、母が作ってくれた
紙のお雛様だった

2004.3.22



No200

幼馴染

待て
こんなご時世になんと心得ておる

憲兵に呼びとめられて
加奈子は、徹の後ろに思わず隠れていた

昭和20年、春
もう誰しもが敗戦かもと疑いを持ち始めていた

幼馴染の徹と遊んだ
懐かしい山道を歩いていた時だった

徹は話した

勤務、ご苦労である
自分は少尉であるが
最後の休暇で帰っておる

憲兵は思わず
下がって、敬礼すると
すぐに行ってしまった

徹さん
最後の休暇なの?

いやあ
ああ言っておけばいいだろ?
いたずら顔になった、徹だった。

加奈ちゃん
何があっても
僕は両親や加奈ちゃん達を守る為に
戦うよ

はい..

*******
あの日
長崎の空は晴れて
雲が途切れた
福岡では厚い雲に覆われていたのに..
加奈子は、徹の母を見舞う為に
長崎市内を離れていた
徹に守られて、加奈子は被爆することはなかった...
そして、徹が帰ってくることはなかった。
あの日の帰り道、加奈子のおでこに優しくくちづけをして
ふいに、強く抱きしめた徹のことを
加奈子は、今でもその感触を忘れることはない..

2004.3.16



No199

にいちゃん

真夏の昼下がり
遊んでいて、下水に足を滑らせて
由紀は足に怪我したのだった。
小学校2年生だった。
高校生だった兄に、自転車で病院へ連れて行ってもらった。

にいちゃん、痛いよ
ぐずぐずと泣きながら
兄にしがみついていた。

もう少しだからな
我慢しろよ

うん

病院へ着いてからもずっと兄は
由紀のそばから離れなかった。

ちよっと縫うから
足を持っててくれないか

先生のその声に
大声で泣き出した由紀だった。

あの時の兄が
たまらなく優しかったこと

いまでも由紀は思い出す

帰りのでこぼこ道で

頑張ったな、由紀
えらかったぞ
帰ったら
兄ちゃんがおやつ買ってやるからな

うん

2004.3.11



No198
お芋

どこも痛くないっていいねぇ

伯母がつぶやいた
もう何十年も畑をしてきたから
腰が痛くてね

すっかり曲がってしまって
背はどんどん小さくなっていった伯母だった。

つましく、つましく生きて来て
気丈過ぎるせいで
とうとう、ひとり暮らしを選んでいる

どこも痛くないといいねぇ

会えば出る言葉は同じだけど

それでもいつもそっと聞く
そっとさする

春の風はまだ冷たくて
小柄な伯母はそれでも
帰る時には必ず
お芋や、ジャガイモを持たせてくれるのでした。

2004.3.9



No197

たんぽぽ




田舎の小さな駅
駅員さんもひとり

小さな女の子が、電車が入ってきたのに
だだをこねていた。

早くね、乗ってね
母は急かせているのに
女の子はぐずっていた

指を指す方向にはたんぽぽが咲いていた。

そのやりとりを見ていた駅員は
さっと線路を越えて
たんぽぽを何本か取ってきてくれた。
乗客もほっとした顔で眺めていた。

ありがとうございました。
母は何度も頭を下げて
やがて何事もなかったように
電車は走り出していた。

まだのどかな風が流れていた
遠い日のことだった。



No196

母さん、行きたくないんだよ
戦争に

母は忠志の言葉を思い出すと
いつも泣いていた

あんなに行きたくないと言っていたのに
帰っては来たけれど
もう抜け殻みたいになっていたよ
あの子
そのまま病気で逝ってしまってね

舞は聞いた話を思い出す

戦争の時だって
いろんな人がいたんだ
行きたくないと
思っていた

正直に生きていた

負けるとわかっていて
死んでいった若者たち

最後の桜は
と゜んなふうに目に映ったことでしょうか

若き命
惜しみなく散って
命の花が沈んでいく

舞は今
平和の有難さ
噛み締める

2004.3.5



桜の木の下で

No195

今年も桜の花が咲き始めると
聞いた話を思い出す

戦後まもなくは
この桜の木の下で、いつまでも動かずに
泣いていた女の人がいたということ

長いフレア−の洋服に身を包んで
動くこともせず
ただ、はらはらと流す涙を
拭くこともなく
立っていたこと..

さらさらと髪は風に揺れて
ふわりふわりと
スカ−トさえ
優しく風を受けていたこと

誰を思って
泣いていたのでしょうか

戻ることのない人
愛しい人
恋しい人

パラシュ−トで作られた
洋服が
いつまでも
風に揺られて....

2004.3.3



No194




梅の花

梅の花が咲いたら、きっと元気になれるよね

そうね、きっとね
うん

子供ね、まだ下の子
高校生なの

このまま残していけないわ

そうよ、元気にならなくっちゃね

じゃ、また来るからね
今度来る時は、梅の花一枝持ってくるね

うん
待っているね

舞は、病室を出ると
涙が止め処なく、こぼれていた
友が煩ってからまだ日が浅い
なのに気づいた時はもう
悪性腫瘍の末期だった

それからまもなくして、友は召されて逝き
亡くなった日には
どこまでも青い空が広がり
梅の花が優しく咲いていた...

2004.2.9