短 歌  俳句 一行詩 

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2004.3



ながき雨 まとひて思ふ 薄衣

雨だれの 音聞くひととき 流れゆく
七つのしずく ぼんぼん時計

朝顔や 青の彼方の 遠き日よ

雨晴れて 燃ゆることなき 白むくげ

2004.6.27




花一輪 散らざる今よ 時止まれ

夏来る 蝶のふれ合ふ 音すなり

風の香も 南に近し ツバメ飛ぶ

2004.6.20




夏雲の 湧きて決め事 ひとつある

母はまた 老いているかな 麦青む

わが胸を はらり音する 落花かな

花ぐもり、そっと眼鏡をかけてみる、インテリに見えるよ、微笑貰った日あり

初夏の 池におさなき 浮き葉あり

2004.6.7




ねじり花 誰に降りゆく 休み雨

ブランコの向こうに見ゆる愛しき日
子供の日にいた父の横顔

花曇り 胡瓜落つ日 ツルの行方

薄暑来る ここちよしかな ツバメの巣

夏雲の 湧きて思ふよ 言の葉を

散歩道 そぞろ歩けば 母に似て

ビョウヤナギ やがて雨呼ぶ ツバメいる

2004.5.29




聞香の あとのこころや 蒼き花
            
君と見た、白き夏来るさりげなく、ペ−ジをめくる今日もまた

百色を 静めた夕日 また落ちて

木立ある やさしくあやす ぬくもりよ

座布団の ぬくさはかなく 父がいて

2004.5.27




もう後ろを見ないで、目の前に咲く花が貴方の花

夢のような言葉を貰ったよ、遥かなる日に花咲く丘で、青い海辺で

すくい取れなかった、指からこぼれた思いは、さらさらと砂のように

初蝶に、優しき花の揺れ、遠山霞み、雲ゆく瀬戸は皐月空

池の睡蓮暮れかかる、白ツツジ見ゆ、頬ゆく風は夏

木漏れ日の おちつくところ 鳥のいる

2004.5.24



恋文を 書いた頃よ 桐の花

紅き薔薇 襞の重ねよ 夏はじまりき

きらきらと 月光降りぬ 終わり花

旅カバン 鍵小さくて 鴨渡る

2004.5.15




雨去りて夜ふかく香る花のあり
梢連れ鳴く鳥のかそけさ

かぐはしき風、髪に吹く路、ウツギ咲く

青葉風 吹きよせ庭に メダカいる

若葉透く 陽(ひ)のまぶしさよ 綺羅花の

2004.5.6




ものおもひ久しかりけり半月の
月夜に浮かぶ水面散る花

夕闇て散り乱れし桃の花
なまめかしけれ色あせぬまま

藤揺れて波間にきらめく思ひあり
春の入江の空渡る雲

2004.4.29




光りあり若葉やはらかき君がいて
ささやくようにもの言ふ耳もと

陽にすかし 葉脈に見ゆる 言の葉よ

桜散る 風になびくよ 髪の上

ひかり野に 蝶を見た 愛 ある頃

2004.4.26




麦に吹く 風夏近し 柳揺れ

花木瓜に まるき風吹く 朧月

桜茶を 浮かべて見える 彼方の日

ゆく春に 小刻み震え 桜草

2004.4.15




そよ風の嫁ぐ日近し陽だまりに
 母は持ちゐる鈴鳴る小鋏


夢を織る、虹色の気持ち持ちながら、自分の為に、生きる為に

草の中 春濃く匂ひ 母子草

チュ−リップ 想ひ思ひよ はらり散る

春はゆく 雛の眉見ゆ 小筆かな

2004.4.12




春萌えて 山ほととぎす ほしいまま

うつくしき 桜しずく 便りあり

水音の 暮れながきかな 花林檎

眺めゐる、春待ちの空、君の手を思ふしみじみ思ふ、遥かなる日の

綴り言葉の訳を拾う、心の隅の微笑みひとつ持つ、春の夜に

暮れてゆく、心のままに静かなる、波の返しよ砂浜にいて

桃の花、青き空へと光りを集めて輝けり、薄紅色よ心いろ

2004.4.5